私が和食レストラン向けに刺し身でたべられる魚を仕入れるにあたり、改めてオーストラリアのシーフード業界と魚に関する食文化に触れておこうと思う。それは市場に買いに来る人たちである程度見えてくる。
まず一番多いのが街中で魚屋をやっている人たち。基本的に昔からある魚屋はギリシャ人がやっている。こういった街の魚屋はフィッシュ&チップスを売っていることが多く、オージーにとって身近な魚料理は間違いなくフィッシュ&チップスだろう。


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※人気のフィッシュ&チップス店は電話予約なしだと一時間待ちは当たり前だ。サーフィン後の海上がりに食べるフィッシュ&チップスは最高に美味い。


次に多いのがベトナム人がやっている魚屋。メルボルンのシーフード業界はギリシャ人が仕切っていて、アジア人業界最大勢力のベトナム人が市場で買ったものをアジア系のレストランなどに卸している。ベトナム人の主な卸し先はベトナム料理はじめ東南アジア全般の料理、インド料理などのレストランとなる。


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一般客が買い物できるマーケットに入っているアジア人の魚屋はベトナム人が多い。

ここまででポイントになるのはいずれのレストランも生食する料理がなく基本的に全て調理するということだ。
メルボルンのシーフード業界ではもう一つ独自の路線を築いた華僑系の存在は大きい。1つは冷凍食品の扱いで大きなシェアを持っていることと、あと1つはオーストラリアで寿司が流行ったときにいち早くtakeaway shopを全国展開して独自の仕入れルートを確保している寿司チェーン店会社など。そのチェーン店全体での鮮魚取り扱い量はオーストラリアベスト10以内に確実に入ると思われる。

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ショッピングモールに入っていないのが珍しいくらいにメジャーな存在。オージーは暖かくなると寿司を食べるので、日本人の冷やし中華や素麺の感覚に近いかも知れない。オーストラリアの寿司ロール文化はまたの機会に。
さて、ここまで私が書いたところまで日本人が出てくるポジションがないことにお気付きだろうか。日本の冷凍技術、寿司刺し身のオリジナル国、これだけのアドバンテージがあっても業界に食い込めなかったのはやはり移民の時期が大きな要因なのかも知れないが、やはり魚を生で食べるという文化自体がオーストラリアには根付いてなく、日本の移民と一部の日本通だけのものであったからではないかと思う。
今でこそ寿司刺し身がオージーにとって身近になってきてはいるが、未だに生魚を食べたことがないというオージーが確実に一定数いるのは間違いない。




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そもそもオーストラリアでは基本的に調理した魚しか食べる文化がなかく、揚げるかオーブンで焼くかになる。ここ最近キャラバンパークに住むことによって偏ってない、いわゆる一般的なオージーと会話する機会に恵まれている。彼らの半数前後が生魚を食べたことすらなく、今後食べるつもりもないと言っているのには驚いた。あと1つ、スポーツフィッシングも人気なんだけど、キャッチ&リリースって捌いてまで食べるほど魚好きじゃないだけというのもありえるのではないかと。
実はオーストラリアに来て最近まで感覚的には7割以上が抵抗なく生魚を食べれるという感じだった。というのも今まで私の周りに居たオージーが魚屋関係、和食レストラン関係だからオージーとはいえ寿司刺し身好き、食べれるという人たちが多かったのだろう。キャラバンパークに来てる人たちこそ何もフィルターが掛かってない一般的なオージーなんだなと。そう考えると日本人がオーストラリアのシーフード業界で大きなシェアを取れなかったのも納得できる。

だいたいこのようなバックボーンのか2000年以降寿刺し身の人気とともに和食レストランが増え、寿司刺し身の需要が増えピークに達し、淘汰が始まりそうな、そんな時期から私はこの業界に入ることとなる。

次回は私が見てきた市場と嘘つきども。