ここまである程度オーストラリアの食文化に触れたので分かると思うが、私が通っていた市場にある魚は基本的に調理向けを前提にしている。そう、そこで根本的な大きな問題にぶち当たる。売っている魚が刺し身で食べられるか売っている本人が分からないのだ。日本ではまずあり得ない。築地場内で「これは生で食べられるか?」という質問には「加熱調理する必要があるのか?」という意味に他ならない。しかし、そもそも食べたことないし調理前提の商品、向こうにとれば質問自体がナンセンスなわけだ。
ちなみに築地で普通に生食可能な魚を指差して、刺し身で食べられるか?なんて質問しようものなら、うちの魚はそんなに鮮度が悪いか?と訝しがるか、素人なんだなと思われるのがおちだ。そこで、先代の社長と仕入れ担当は片っ端から地元に水揚げされる魚を刺し身で食べられるか試して現在に至るという。輸送技術が上がった現在は常に新しい鮮魚が市場に入荷され、私もいくつか試し今現在普及しているものもある。その1つがニュージーランド産のsouthern boa fish、和名クサカリツボダイ。私が美味いと思いお客さんに提案して定着した魚。
少し話しがそれたが、市場を仕切っているのはグリーク(ギリシャ人)はとにかく気が短い。そして嘘つきだ。市場の買い付け担当になるにあたって、社長に言われたのが「マーケットの連中の言うことを信じるな」ということだった。基本的に私は仕事をする時は性善説のもと人に接してきたわけだったが、その性善説はあっさりと覆される。一通り目利きが出来るようになって買い付けの駆け出しの頃に活きの良いホウボウが売っていた。昨日は無かったから昨晩入荷されたものと推測される。そうは言っても簡単には買えない。買う単位はBinだからだ。1Binあたり20kg - 30kg入っている。もし、外れを引こうものならそれらはゴミとなる。時間もない、ホウボウだけにとらわれてる場合じゃない。数匹手に取り大丈夫となり1Binだけ買うことにした。持って帰り改めて自社のBinに魚を入れ替えた時だった。中段以降の魚がほとんど傷ものかゆるい(締まっているの対語かな)ものばかりだった。そういうことをする業者は文句を言っても仕方ない、二度と買うかっていうのが日本人的。こちらのマーケットでは文句を言って、言い合い、時には怒鳴り合いまでして初めてコミュニケーションが始まる。グリークの凄い所はここまで喧嘩腰で話したから以降ギクシャクすると思うのだが全く意に介していない、むしろ仲良くなった気がしてしまうのだ。実際、仲良くなって信頼関係が出来るとある程度電話で注文出来るようになる。商品が市場に並ぶ前に確保できるのがメリット、キャンセルがし難いのがデメリットになるが信頼関係が出来ていればなにかと融通がきく。その経験は後の牡蠣の担当になった時に大いに発揮することとなるがそのお話しはまた今度。
次回、メルボルンの市場で売られている魚を紹介しようと思う。
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